1. 産後の肩こりが起こる4つの原因
産後の肩こりには、一般的な肩こりとは異なる産後特有の原因があります。原因を正しく理解することが、効果的な対策の第一歩です。
原因1:授乳姿勢による筋肉の緊張
授乳は1日8〜12回、1回あたり20〜30分——合計すると1日4〜6時間も同じ姿勢を取り続けることになります。授乳中は赤ちゃんの顔をのぞき込むために頭を下げ、腕で支えるために肩をすくめた姿勢になりがちです。
この姿勢が長時間続くと、僧帽筋(そうぼうきん)上部と肩甲挙筋(けんこうきょきん)が常に緊張状態となり、慢性的な肩こりを引き起こします。
原因2:抱っこによる肩・腕の疲労
生後3ヶ月の赤ちゃんの平均体重は約6kg、6ヶ月で約8kg。この重さを1日に何十回も抱き上げ、長時間抱っこし続けるのは、肩と腕にとって相当な負荷です。
特に片側ばかりで抱く癖があると、左右の筋肉バランスが崩れ、片側の肩こりがひどくなります。抱っこ紐を使っていても、肩ベルトの調整が不十分だと肩への負担は軽減されません。
原因3:骨盤の歪みから来る姿勢崩れ
産後の骨盤の歪みは、肩こりとも深く関係しています。骨盤が前傾すると反り腰になり、バランスを取るために背中が丸まり(猫背)、頭が前に出ます。この「頭部前方位姿勢」は、頭の重さ(約5kg)を僧帽筋が常に支えなければならないため、肩こりの大きな原因になります。
骨盤ケアについては「産後の骨盤矯正は意味ない?」で詳しく解説しています。
原因4:運動不足と筋力低下
妊娠後期から産後にかけて、多くのママは運動量が大幅に減少します。肩甲骨を動かす菱形筋(りょうけいきん)や僧帽筋下部が弱ると、肩甲骨が外側に広がった「巻き肩」の状態になり、胸が閉じて肩が内側に巻き込まれます。
この巻き肩の状態では、首から肩にかけての筋肉が常に引き伸ばされて緊張し、慢性的な肩こりを生み出します。
産後の肩こり原因まとめ
| 原因 | 鍛えるべき筋肉 |
|---|---|
| 授乳姿勢 | 僧帽筋下部・菱形筋(肩甲骨を寄せる筋肉) |
| 抱っこの負荷 | 三角筋・上腕二頭筋(肩と腕の筋力) |
| 骨盤歪み→猫背 | 脊柱起立筋・体幹(姿勢を支える筋肉) |
| 運動不足→巻き肩 | 僧帽筋下部・菱形筋・深頸部屈筋群 |
2. 産後の肩こりを改善する筋トレ5選
ストレッチは「硬くなった筋肉をほぐす」対症療法ですが、筋トレは「肩こりを起こさない体を作る」根本治療です。以下の5種目で、肩こりになりにくい体を目指しましょう。産後の筋トレ全般については「産後ダイエットに効く筋トレメニュー8選」もご参照ください。
種目1:肩甲骨寄せ(リバースフライ動作)
肩こり改善で最も重要な種目です。肩甲骨を背骨に寄せる動きで、僧帽筋下部と菱形筋を鍛えます。巻き肩の改善に直結するトレーニングです。
やり方
- 立った状態で両腕を体の前に伸ばす(肩の高さ)
- 肘を軽く曲げた状態で、両腕を横に開きながら肩甲骨を背骨に寄せる
- 肩甲骨が寄りきったところで2秒キープ
- ゆっくり元に戻す
- 15回×3セット
肩を上げず、肩甲骨だけを動かす意識がポイントです。授乳の合間、立ったままでもすぐにできます。
種目2:チンタック(深頸部屈筋トレーニング)
頭が前に出た「ストレートネック」を改善するトレーニングです。深頸部屈筋群(しんけいぶくっきんぐん)を鍛えることで、頭を正しい位置に戻し、首から肩への負担を軽減します。
やり方
- 壁に背中をつけて立つ(かかと・お尻・背中・後頭部を壁につける)
- 顎を引いて、後頭部を壁に押しつける
- 首の前側に力が入る感覚で5秒キープ
- ゆっくり力を抜く
- 10回×3セット
スマホを見ている時間が長いママには特に効果的です。姿勢改善にも大きく貢献します。
種目3:ウォールプッシュアップ(壁腕立て伏せ)
通常の腕立て伏せの壁バージョンです。大胸筋と前鋸筋(ぜんきょきん)を鍛えることで、肩甲骨の安定性を高め、巻き肩を改善します。産後すぐから始められる負荷の軽い種目です。
やり方
- 壁に向かって腕の長さ分離れて立つ
- 手を肩幅に開いて壁に手をつく
- 肘を曲げて壁に体を近づける
- 壁を押して元の位置に戻る
- 15回×3セット
赤ちゃんが寝ている横で壁さえあればできます。慣れてきたらテーブルに手をついて角度をつけると負荷が上がります。
種目4:バックエクステンション
背中の筋肉(脊柱起立筋)を鍛えて、猫背を改善するトレーニングです。背筋が強くなると自然に胸が開き、肩甲骨が正しい位置に戻るため、肩こりが改善します。
やり方
- うつ伏せになり、両手を耳の横に添える
- 息を吸いながら上体をゆっくり持ち上げる(反らせすぎない)
- 背中の筋肉が縮む感覚で2秒キープ
- ゆっくり元に戻す
- 10回×3セット
腰を反らせすぎると腰痛の原因になります。みぞおちが床から少し離れる程度で十分です。
種目5:ドローイン+肩甲骨寄せ(複合運動)
お腹のインナーマッスル(腹横筋)と肩甲骨周りの筋肉を同時に鍛える種目です。体幹の安定+肩甲骨の正常化を一度に行えるため、時間のないママに最適です。
やり方
- 立った状態で、お腹をへこませる(ドローイン)
- ドローインをキープしたまま、両腕を横に開いて肩甲骨を寄せる
- 肩甲骨が寄った状態で3秒キープ
- ゆっくり戻す(お腹のへこみはキープしたまま)
- 10回×3セット
骨盤の安定と肩こり改善を同時に狙える種目です。授乳前のルーティンに取り入れるのがおすすめです。
3. 授乳の合間にできる即効ストレッチ
筋トレは根本改善のためのアプローチですが、「今すぐ肩がつらい」という時に効く即効ストレッチも紹介します。授乳の合間、赤ちゃんを寝かせた直後などに30秒で行えます。
僧帽筋ストレッチ(首横倒し)
- 座った状態で、右手を頭の左側に添える
- 右側にゆっくり首を倒す(肩は下げたまま)
- 左の首から肩にかけて伸びを感じたら20秒キープ
- 反対側も同様に行う
肩甲骨回し
- 両手を肩の上に置く
- 肘で大きな円を描くように前回し10回
- 後ろ回し10回
- 肩甲骨が大きく動いている感覚を意識する
胸開きストレッチ
- 壁や柱に片手をつく(肘の高さは肩と同じ)
- 体を反対側にゆっくりひねり、胸の前が伸びるのを感じる
- 20秒キープ。左右各2回
これらのストレッチは、授乳後や抱っこの後に毎回行うことで、肩こりの悪化を防ぎます。ただし、ストレッチだけでは根本解決にはなりません。筋トレと組み合わせて初めて、肩こりにならない体が作れます。
4. 日常生活でできる肩こり予防
筋トレとストレッチに加えて、日常の「ちょっとした意識」で肩こりを大きく軽減できます。
授乳の姿勢を見直す
- 授乳クッションを使って赤ちゃんの高さを上げる→前かがみにならない
- 背もたれのある椅子に深く座り、背中を支える
- 赤ちゃんを体に近づける(自分が赤ちゃんに近づくのではなく)
- 15〜20分ごとに抱き替える(左右の腕を入れ替える)
抱っこの工夫
- 片側ばかりで抱かず、左右均等に抱く
- 抱っこ紐の肩ベルトをしっかり調整(肩に食い込まない位置に)
- 抱き上げるときは膝を曲げてスクワットの動作で(腕だけで持ち上げない)
スマホの姿勢を改善する
育児中はスマホで情報検索をする時間が増えます。うつむき姿勢が長時間続くと、首への負担は頭の重さの3〜5倍にもなります。
- スマホを目の高さに持ち上げて見る
- 15分に1回は顔を上げて天井を見る
- 授乳中のスマホはスマホスタンドを活用し、手で持たない
肩を温める
血行不良は肩こりを悪化させます。入浴時に肩まで浸かる、ホットタオルを肩に当てる、温かいシャワーを首から肩に当てる——これらの「温め」で血行を促進し、筋肉の緊張をほぐしましょう。
5. こんな肩こりは要注意
産後の肩こりのほとんどは筋肉由来ですが、以下の症状がある場合は医療機関を受診してください。
- 腕や手にしびれがある
- 肩の痛みで腕が上がらない
- 頭痛やめまいを伴う
- 安静時にも痛みが続き悪化している
- 片側の肩だけが急激に痛む(特に左肩)
これらに該当しなければ、筋トレとストレッチで安全に改善に取り組めます。PROFIT GYMの肩こり改善アプローチもご覧ください。
6. まとめ
産後の肩こり改善のポイントを振り返ります。
- 4つの原因:授乳姿勢、抱っこの負荷、骨盤歪み→猫背、運動不足→巻き肩
- 筋トレ5種目:肩甲骨寄せ、チンタック、ウォールプッシュアップ、バックエクステンション、ドローイン+肩甲骨寄せ
- 即効ストレッチ:僧帽筋ストレッチ、肩甲骨回し、胸開きストレッチ
- 日常の予防:授乳姿勢の見直し、抱っこの左右均等、スマホの高さ、肩を温める
- 根本改善:ストレッチ(対症療法)+筋トレ(根本治療)の組み合わせが鍵
産後の肩こりは、筋トレで「肩こりにならない体」を作ることで根本から改善できます。まずは肩甲骨寄せとチンタックの2種目から始めてみてください。
PROFIT GYMでは、産後ママ向けの肩こり改善を含むプログラムを週1回30分から提供しています。お子様連れOK・食事指導無料です。詳しくは産後ダイエットページをご覧ください。
この記事を書いた人

佐藤 優樹
NSCA-CPT(全米認定パーソナルトレーナー)、幼児体育指導者検定2級。元市の健康増進事業パーソナルトレーナーとして肩こり改善の指導経験多数。
「肩甲骨を寄せる動きを1日1回取り入れるだけで、驚くほど肩が楽になります。まずはそこから始めましょう。」
