1. 産後に膝が痛くなる4つの原因
産後の膝痛には、加齢や運動不足による一般的な膝痛とは異なる、産後特有の原因があります。
原因1:骨盤の歪みによるアライメント崩れ
産後の骨盤は、出産時のリラキシンの影響で不安定な状態にあります。骨盤が歪むと、その下にある股関節→膝→足首のアライメント(骨の配列)が崩れ、膝に不均等な負荷がかかります。
特に骨盤が外側に開いたままだと、膝が内側に入りやすくなり(ニーイン)、膝の内側に痛みが出やすくなります。骨盤ケアについては「産後の骨盤矯正は意味ない?」で詳しく解説しています。
原因2:体重増加による関節への負担
妊娠中に増えた体重が産後すぐには戻らないため、膝への負荷が増加しています。膝関節には歩行時に体重の3〜5倍、階段昇降時には体重の7〜8倍の力がかかるとされています。
例えば、妊娠前から10kg増えた状態で階段を昇ると、膝には70〜80kg分の余分な負荷がかかっている計算になります。体型回復については「産後の体型が戻らない原因と対処法」もご参照ください。
原因3:ホルモンの影響で関節がゆるい
妊娠中に分泌されるリラキシンは、骨盤だけでなく全身の関節の靭帯を緩めます。膝の靭帯もゆるんでいるため、関節が不安定になり、通常なら問題ない動作でも痛みが出やすくなります。
リラキシンの影響は産後6ヶ月程度まで続くとされるため、この期間は膝に過度な負荷をかける運動(ジャンプ、ランニングなど)は控えるべきです。
原因4:大腿四頭筋・臀筋の筋力低下
膝を支える最も重要な筋肉は大腿四頭筋(太ももの前側)と大臀筋(お尻)です。妊娠後期から産後にかけて運動量が激減することで、これらの筋肉が弱り、膝を支えきれなくなります。
さらに、育児中は赤ちゃんを抱えたまま立ったり座ったりを繰り返すため、弱った筋力で膝に大きな負荷がかかり続けるという悪循環が生まれます。
産後の膝痛原因まとめ
| 原因 | メカニズム | 対策 |
|---|---|---|
| 骨盤の歪み | アライメント崩れ→膝への不均等な負荷 | 骨盤ケア+内転筋強化 |
| 体重増加 | 関節への物理的負荷増大 | 適切な体重管理+筋力強化 |
| ホルモン | リラキシンで靭帯がゆるい | 膝周りの筋力で関節を安定 |
| 筋力低下 | 大腿四頭筋・臀筋が弱い | 段階的な筋力トレーニング |
2. こんな膝痛は要注意 — 受診すべきサイン
産後の膝痛のほとんどは筋力と骨盤に起因するものですが、以下の症状がある場合は整形外科を受診してください。
- 膝が赤く腫れて熱を持っている
- 安静にしていてもズキズキ痛む
- 膝がロックして動かなくなる
- 膝から引っかかるような音がして痛む
- 膝痛と同時に全身の関節が痛む(膠原病の可能性)
- 痛みが2週間以上改善しない
特に産後は自己免疫疾患のリスクが一時的に高まるため、複数の関節が同時に痛む場合はリウマチ科の受診も検討してください。膝痛全般の運動療法については「膝痛に効く運動7選」もご参照ください。
3. 膝を支える筋トレ5選
膝痛改善の鍵は、膝を支える周囲の筋肉を鍛えることです。膝関節自体は筋肉で直接覆われていないため、太ももとお尻の筋力が「膝のサポーター」の役割を果たします。産後の筋トレ全般については「産後の筋トレメニュー8選」もご参照ください。
種目1:パテラセッティング(膝のインナーマッスル)
膝に最も負担が少ない入門種目です。内側広筋(ないそくこうきん)という膝のお皿の内側を支える筋肉をピンポイントで鍛えます。膝が痛くてスクワットができない方でも安全に行えます。
やり方
- 床に足を伸ばして座る
- 膝の下に丸めたタオルを置く
- タオルを膝裏で押しつぶすように力を入れる
- 太ももの内側に力が入る感覚で5秒キープ
- ゆっくり力を抜く。20回×3セット
膝に痛みを感じる場合は無理せず、力の入れ具合を調整してください。産後1ヶ月から始められます。
種目2:ストレートレッグレイズ(太もも前側の強化)
膝を曲げずに行うため、膝関節に負荷をかけずに大腿四頭筋を鍛えられます。膝痛リハビリの定番種目です。
やり方
- 仰向けに寝て、片膝を立て、もう片方の足はまっすぐ伸ばす
- 伸ばした足を床から15〜20cm持ち上げる
- 3秒キープし、ゆっくり下ろす
- 左右各15回×3セット
足を上げすぎると腰に負担がかかります。15〜20cm程度の高さで十分です。
種目3:ヒップリフト(お尻で膝を守る)
大臀筋は膝を支える重要な筋肉です。お尻が弱いと、歩行時やしゃがむ時に膝が内側に入りやすくなり(ニーイン)、膝痛を引き起こします。ヒップリフトでお尻を鍛えて膝を守りましょう。
やり方
- 仰向けに寝て、膝を90度に曲げ、足を腰幅に開く
- お尻を持ち上げ、肩から膝が一直線になるまで上げる
- お尻の筋肉を締めて3秒キープ
- ゆっくり下ろす。15回×3セット
腰痛改善にも効果的な一石二鳥の種目です。
種目4:クラムシェル(膝の内側入りを防ぐ)
中殿筋(ちゅうでんきん)を鍛えて、歩行時や立ち上がり時の膝の内側入り(ニーイン)を防止します。骨盤の左右の安定にも効果的です。
やり方
- 横向きに寝て、膝を90度に曲げる
- かかとをつけたまま、上側の膝を貝殻が開くように開く
- お尻の横に力が入る感覚で2秒キープ
- ゆっくり閉じる。左右各15回×3セット
種目5:壁スクワット(膝に優しいスクワット)
通常のスクワットは膝痛がある方には負荷が高いため、壁を使って膝への負担を軽減したバージョンです。太もも全体とお尻を同時に鍛え、膝の安定性を総合的に高めます。
やり方
- 壁に背中をつけて立つ(足は壁から30cm程度前に出す)
- 壁に背中をつけたまま、膝を45〜60度程度曲げる(深く曲げすぎない)
- 太ももに力が入る感覚で10秒キープ
- ゆっくり立ち上がる。10回×3セット
膝に痛みが出ない範囲で角度を調整してください。痛みが強い場合は浅い角度から始め、筋力がついてきたら徐々に深くしましょう。
4. 産後の膝痛を和らげるストレッチ
膝周りの筋肉の硬さも膝痛の原因になります。以下のストレッチで太ももとふくらはぎの柔軟性を改善しましょう。
太もも前側(大腿四頭筋)ストレッチ
- 壁や椅子に片手をついて立つ
- 片足のかかとをお尻に引き寄せ、手でつかむ
- 太ももの前側が伸びるのを感じたら20秒キープ
- 左右各2回
太もも裏側(ハムストリングス)ストレッチ
- 椅子に浅く座り、片足を前に伸ばす
- 背筋を伸ばしたまま、上体を前に倒す
- 太ももの裏側が伸びるのを感じたら20秒キープ
- 左右各2回
ふくらはぎストレッチ
- 壁に両手をつき、片足を後ろに引く
- 後ろ足のかかとを床につけたまま、前の膝を曲げる
- ふくらはぎが伸びるのを感じたら20秒キープ
- 左右各2回
ストレッチは筋トレの前後に行うと効果的です。朝起きた時や入浴後など、体が温まっているタイミングもおすすめです。
5. 育児中の膝を守る動作のコツ
筋トレで膝を強くすることに加えて、日常の育児動作を見直すことで膝への負担を大幅に減らせます。
赤ちゃんを抱き上げる時
- 腰を曲げて持ち上げない→ 膝を曲げてしゃがみ、赤ちゃんを体に密着させてから太ももの力で立ち上がる
- スクワットの動作をイメージ:膝とつま先を同じ方向に向けて立ち上がる
- 赤ちゃんを体から離した状態で持ち上げない(腕の力だけで持つと膝と腰に負担大)
床からの立ち上がり方
- 正座やあぐらからいきなり立ち上がらない
- まず片膝立ちになり、前の足で床を押して立ち上がる
- 近くに家具があれば、手をついて支えにする
- 可能であれば高さのある椅子やソファに座る頻度を増やす(床座りを減らす)
階段の昇り降り
- 赤ちゃんを抱いて階段を使うときは必ず手すりを持つ
- 昇る時は痛くない方の足から先に出す
- 降りる時は痛い方の足から先に出す(「良い足で天国に昇り、悪い足で地獄に降りる」と覚える)
- エレベーターが使える場合は積極的に活用する
授乳・おむつ替えの姿勢
- 授乳は椅子やソファに座って行う(床に座ると立ち上がる時に膝に負担)
- おむつ替えは高さのあるベビーベッドやテーブルで行う
- 床で行う場合は、膝の下にクッションを敷く
6. まとめ
産後の膝痛改善のポイントを振り返ります。
- 4つの原因:骨盤の歪み、体重増加、ホルモンの影響、筋力低下
- 筋トレ5種目:パテラセッティング→ストレートレッグレイズ→ヒップリフト→クラムシェル→壁スクワット
- ストレッチ:太もも前側・裏側・ふくらはぎの3部位
- 育児動作:抱き上げはスクワット動作で、床からは片膝立ち経由で、階段は手すり必須
- 危険サイン:腫れ・熱・ロック・多関節痛は受診を
産後の膝痛は、膝周りの筋力を鍛えて「膝を支える力」をつけることで改善できます。まずはパテラセッティングとヒップリフトの2種目から始めてみてください。
PROFIT GYMでは、産後の膝痛改善を含むプログラムを週1回30分から提供しています。膝痛改善アプローチの詳細はこちら。お子様連れOK・食事指導無料です。
この記事を書いた人

佐藤 優樹
NSCA-CPT(全米認定パーソナルトレーナー)、幼児体育指導者検定2級。元市の健康増進事業パーソナルトレーナーとして膝痛改善の指導経験多数。
「膝の痛みは「歳のせい」ではなく「筋力不足」が原因のことがほとんどです。正しい筋トレで、痛みなく育児を楽しめる体をつくりましょう。」
